ドライバーを運行管理者へ育成する方法
運行管理者の不足や将来の世代交代に備え、「社内のドライバーから運行管理者を育てたい」と考えている運送会社も多いのではないでしょうか。
現場を知るドライバーは、運行の流れやドライバー側の事情を理解しているため、その経験を運行管理業務へ活かすことができます。ただし、ドライバー経験が長いだけで、そのまま運行管理者として選任できるわけではありません。
この記事では、運行管理者候補の選び方から受験資格、資格取得に向けた社内教育、資格取得後の育成まで、会社が取り組みたいポイントを解説します。

ドライバーを運行管理者へ育成することはできる?
現場で働くドライバーを、将来の運行管理者候補として育成することは可能です。
特に、自社の運行内容やドライバーの働き方を理解している社員であれば、これまでの現場経験を運行管理業務に活かせる場面もあります。
一方、運行管理者には、法令や労務管理、安全管理などについての知識も必要です。現場経験だけに頼るのではなく、新たな知識を身につけながら段階的に育成することが大切です。
運行管理者として選任するには資格者証が必要
貨物自動車運送事業で運行管理者として選任するには、原則として「貨物」の運行管理者資格者証が必要です。
試験合格を目指す場合は、受験資格を確認したうえで試験対策を進め、合格後に資格者証の交付申請を行います。
そのため、社内育成では「試験を受けてもらう」だけではなく、資格者証の取得やその後の配置まで含めた計画を立てましょう。
なぜ運送会社は運行管理者を社内で育成した方がよい?

運行管理者が必要になったときに、資格保有者を外部から採用する方法もあります。一方で、必要なタイミングで希望する人材を確保できるとは限りません。
将来の運行管理体制を安定させるためには、採用だけに頼らず、既存社員を計画的に育成することも重要です。
退職・異動による不足に備えられる
現在の運行管理者数が必要人数ぎりぎりの場合、退職や異動によって急に不足する可能性があります。
あらかじめ複数の資格取得候補者を育てておけば、将来の人員変更にも対応しやすくなります。
増車や営業所拡大へ備えられる
車両数の増加や新しい営業所の開設によって、必要な運行管理者数が増えることがあります。
事業拡大を計画している場合は、車両や拠点の計画だけでなく、人材育成も同時に進めておきましょう。
特定の運行管理者への属人化を防げる
一部の社員だけが運行管理業務を担っていると、その人が不在になった際に業務が滞る可能性があります。
資格者や将来の候補者を複数育成することは、運行管理体制の属人化を防ぐことにもつながります。
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運行管理者が足りないときはどうする?不足時の対応と社内育成のポイント
運行管理者候補に向いているドライバーの特徴

運行管理者候補は、単純に「勤続年数が長い」「運転経験が豊富」という理由だけで決めるのではなく、将来の役割も考えて選ぶことが大切です。
安全運行への意識がある
運行管理者は、安全を優先して運行を管理する立場です。
普段から交通ルールや社内ルールを守り、無理な運行を避けるなど、安全に対する意識が高い社員は候補者として検討しやすいでしょう。
周囲へ適切に伝えられる
運行管理者は、ドライバーへの指導や助言を行う機会があります。
知識を持っているだけでなく、相手の状況を理解しながら必要なことをわかりやすく伝えられる力も重要です。
法令や労務管理を学ぶ意欲がある
運行管理業務では、貨物自動車運送事業法だけでなく、道路交通法や労働基準法など幅広い知識が求められます。
資格取得後も継続して学ぶ姿勢があるかを確認しましょう。
状況を客観的に判断できる
ドライバーとして現場を理解していることは強みですが、運行管理者になれば管理する側として判断する必要があります。
現場の事情に配慮しながらも、安全や法令を基準として冷静に判断できることが大切です。
「ベテランドライバーだから」だけで決めない
経験年数だけでなく、本人が管理業務に関心を持っているか、将来的にどのような働き方を希望しているかも確認しましょう。
会社から一方的に資格取得を求めるのではなく、本人のキャリア形成と合わせて考えることが重要です。
ドライバー経験だけでは「運行管理の実務経験」にならない点に注意
運行管理者試験には、運行管理に関する1年以上の実務経験がある方、または試験の種類に応じた基礎講習を修了した方などの受験資格があります。
ここで注意したいのが、単にトラックドライバーとして勤務していた期間を、そのまま「運行管理に関する実務経験」と考えないことです。
候補者が実務経験の要件を満たしているかわからない場合は、基礎講習を利用する方法も含めて受験資格を確認しましょう。
ドライバーを運行管理者へ育成する7STEP

社内で運行管理者を育成する場合は、「候補者を決めて受験してもらう」だけではなく、将来必要となる人数から逆算して進めることが大切です。
STEP1|将来必要になる運行管理者数を確認する
現在の選任人数だけでなく、今後の退職・異動・増車・営業所開設などを確認します。
「いつまでに何人必要なのか」を整理することで、資格取得を始める時期も決めやすくなります。
STEP2|資格取得候補者を選ぶ
現場経験、安全への意識、本人の希望、将来の配置などを考慮して候補者を決めます。
将来の不足に備える場合は、一人だけではなく複数人を候補として育成する方法も検討しましょう。
STEP3|受験資格を確認する
運行管理者試験は、運行管理に関する1年以上の実務経験がある方、または国土交通大臣が認定する講習実施機関で試験の種類に応じた基礎講習を修了した方などが受験できます。
基礎講習については、貨物試験を受験する場合は貨物の基礎講習が必要です。
STEP4|学習期間と受験時期を決める
試験日を確認し、そこから逆算して学習期間を決めます。
「いつか受験する」という状態にせず、受験予定回と学習開始時期を明確にしておきましょう。
STEP5|資格取得のための学習を進める
テキスト、過去問、動画講座などを使いながら、試験に必要な5分野を学習します。
通常業務と両立する必要があるため、無理なく継続できる学習方法を選ぶことも重要です。
STEP6|試験合格後に資格者証の交付を受ける
運行管理者試験に合格しただけでは、資格者証の取得は完了していません。
試験合格後は、必要な手続きを行い、運行管理者資格者証の交付を受けます。
STEP7|選任後の実務教育へつなげる
資格者証を取得したら育成完了ではありません。
実際に運行管理者として仕事を任せるためには、点呼や運行状況の把握、運転者への指導など、自社の運行管理業務を学ぶ必要があります。
会社は運行管理者候補の勉強をどう支援する?

資格取得を社員本人の努力だけに任せると、日々の業務が優先され、勉強が進まない場合があります。
会社として資格取得を進めるのであれば、学習環境も育成施策の一部として考えましょう。
学習時間を確保する
勤務後の自己学習だけを前提にせず、会社としてどのような支援ができるか検討します。
繁忙期を避けて受験時期を設定するなど、業務との調整も重要です。
教材・講座費用を支援する
参考書や問題集、講座の受講費用などを会社が支援する方法があります。
費用面の負担を軽減することで、資格取得へ取り組みやすい環境を整えられます。
受験日までの進捗を共有する
候補者本人だけで学習を管理するのではなく、上司などが定期的に進捗を確認する仕組みを作ります。
「教材をどこまで進めたか」だけでなく、問題演習の結果などから理解度を見ることも大切です。
複数人で資格取得を目指す
一人だけを対象にするのではなく、複数人で同じ試験を目指す方法もあります。
社内で学習状況を共有しやすくなり、将来の資格者不足にも備えられます。
関連記事:
運行管理者の研修・講座費用は経費にできる?会社負担時の考え方と育成コスト
「受験してください」と伝えるだけでは社内育成にならない
会社から「次回の運行管理者試験を受けてください」と伝えただけでは、通常業務に追われ、十分な学習時間を確保できない場合があります。
資格取得を社内育成として進めるなら、「誰が・いつ受験するのか」「どの教材を使うのか」「どこまで学習できているのか」まで会社側でも把握しましょう。
資格取得を個人任せにせず、育成計画として管理することがポイントです。
運行管理者試験に向けた社内教育の進め方
運行管理者試験では、貨物自動車運送事業法関係、道路運送車両法関係、道路交通法関係、労働基準法関係、実務上の知識・能力という5分野から出題されます。
社内教育でも、段階を分けて進めると学習状況を把握しやすくなります。
学習前半|まず試験範囲を理解する
最初は細かな数字をすべて暗記するのではなく、5分野で何を学ぶのか全体像を確認します。
法令や制度の基本を理解してから問題演習へ進みましょう。
学習中盤|問題演習で理解度を確認する
基本を学んだら、その範囲の問題を解きます。
正答数だけではなく、どの分野を繰り返し間違えているか確認することで、一人ひとりの弱点を把握できます。
試験前|苦手分野を重点的に復習する
試験前は、全員に同じ内容を繰り返し学ばせる必要はありません。
過去問などの結果をもとに、それぞれが苦手とする法令や数字を重点的に復習しましょう。
関連記事:
運行管理者(貨物)の効率的な勉強方法|合格を目指す学習スケジュールを解説
ドライバーの仕事と資格取得をどう両立する?
現役ドライバーを運行管理者候補として育成する場合、学習時間の確保が課題になりやすいでしょう。
長時間の勉強だけを前提にせず、「今日は動画を1本見る」「問題を10問解く」など、学習内容を小さく区切る方法があります。
会社側も、早朝勤務や長距離運行など本人の勤務状況を考慮し、無理のある学習計画を立てないことが重要です。
関連記事:
働きながら運行管理者の合格を目指すには?忙しいドライバーの勉強方法
資格取得後も運行管理者の育成は続く

運行管理者資格者証を取得することは、育成のゴールではありません。
試験では必要な法令や知識を学びますが、実際の営業所では、点呼や乗務状況の把握、運転者への指導など、日々の運行に応じた判断が求められます。
資格取得と実務能力は分けて考える
試験に合格したからといって、すぐにすべての運行管理業務を一人で行えるとは限りません。
自社の運行ルールや管理方法についても段階的に教育しましょう。
既存の運行管理者から実務を学ぶ
新しく資格を取得した社員には、経験のある運行管理者から実際の業務を学べる期間を設ける方法があります。
資格取得者を一人で担当させる前に、点呼や記録、ドライバーへの対応などを経験できる体制を整えましょう。
継続的な教育につなげる
運行管理者として選任された後も、法令や安全管理について継続して学ぶ必要があります。
必要な講習を受けるだけでなく、社内でも事故事例や法改正などを共有し、運行管理者としての知識を更新できる環境を作りましょう。
運行管理者資格者証には試験以外の取得方法もある
貨物の運行管理者資格者証は、運行管理者試験への合格以外にも、一定の実務経験と講習受講の要件を満たして交付を受ける方法があります。
現在は、運行管理に関して5年以上の実務経験があり、その期間中に所定の講習を5回以上受講し、そのうち少なくとも1回は基礎講習を受講していることなどが要件となります。
取得までに長期間を要する方法でもあるため、自社の人員計画や候補者の経験に合わせて検討しましょう。
運行管理者育成を属人化させない仕組みを作ろう
運行管理者を継続的に育てるためには、その都度候補者を探すのではなく、会社として人材情報を管理する仕組みを作ることが大切です。
※こちらの表は横スクロールで閲覧ができます。
| 管理項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 現在の選任者 | 営業所・選任人数 |
| 資格保有者 | 資格種別・所属 |
| 育成候補者 | 受験予定・学習状況 |
| 将来必要な人数 | 増車・退職・異動等を反映 |
毎年の人員計画や事業計画とあわせて見直すことで、将来的な不足を早めに把握できます。
運行管理者候補の学習にはオンライン動画を活用する方法も
通常業務を続けながら運行管理者試験を目指すドライバーにとって、毎日まとまった勉強時間を確保することは簡単ではありません。
パシストでは、運行管理者試験対策を1本約20分前後のオンライン動画で学習できます。スマートフォンからも視聴できるため、それぞれの勤務状況に合わせて学習を進める方法として活用できます。
複数の運行管理者候補を計画的に育成したい場合にも、社内の資格取得支援の一つとしてご検討ください。

ドライバーから運行管理者を計画的に育成しよう
ドライバーから運行管理者を育成する場合は、単に資格試験を受けてもらうだけではなく、将来の人員配置まで見据えて進めることが大切です。
「必要人数を確認する→候補者を選ぶ→受験資格を確認する→会社が学習を支援する→資格取得を目指す→資格取得後も実務教育を続ける」という流れで取り組みましょう。
運行管理者育成を資格取得だけで終わらせず、社員のキャリア形成と会社の安全管理体制を支える人材育成として継続することが重要です。