講師のブログ・お知らせ

運送業の労務管理

運送業の労務管理では、一般的な出退勤や残業時間だけでなく、ドライバー特有の拘束時間、休息期間、運転時間なども確認する必要があります。

「勤怠システムで勤務時間を記録しているから問題ない」と考えていても、実際の運行状況と照らし合わせると、改善が必要なケースが見つかることもあります。

この記事では、運送業の労務管理で押さえたい基本的な考え方や、トラックドライバーの拘束時間・休息期間の基準、日々の管理方法について解説します。


運送業の労務管理では何を管理する?


運送業の労務管理では、始業・終業時刻や休日などの一般的な勤怠情報に加えて、トラックドライバー特有の勤務状況も確認する必要があります。

主に確認したいのは、次のような項目です。

  • 労働時間
  • 時間外労働
  • 拘束時間
  • 休息期間
  • 運転時間
  • 連続運転時間
  • 休憩時間
  • 休日の取得状況

これらを一つずつ管理しながら、無理のない運行につなげることが重要です。

勤怠と運行の両方を見ることが重要

出勤・退勤の時刻だけを確認していても、その勤務時間のなかでどのような運行をしていたのかまではわかりません。

一方、運行記録だけを見ていても、月間や年間の時間外労働を十分に把握できない場合があります。

勤怠記録、点呼記録、運行記録、デジタコなど、それぞれの情報を照らし合わせながら管理することが大切です。

まず理解したい「労働時間・拘束時間・休息期間」の違い

運送業の労務管理では、「労働時間」「拘束時間」「休息期間」の違いを理解しておくことが重要です。

※こちらの表は横スクロールで閲覧ができます。

項目 基本的な考え方
労働時間 使用者の指揮命令下で働いている時間
休憩時間 勤務途中に労働から離れる時間
拘束時間 労働時間と休憩時間を合わせた時間
休息期間 勤務終了から次の勤務開始までの使用者の拘束を受けない時間

特に注意したいのが、拘束時間と労働時間を同じものとして扱わないことです。

「拘束時間=残業時間」ではない

たとえば、始業から終業まで14時間だったとしても、そのすべてが労働時間とは限りません。途中に休憩があれば、その時間を含めたものが拘束時間となります。

反対に、時間外労働がそれほど多くなくても、休憩を含めた拘束時間が長くなっているケースがあります。

残業時間だけを確認するのではなく、拘束時間も別に管理しましょう。

トラックドライバーの拘束時間は何時間まで?

現在の改善基準告示では、トラックドライバーの拘束時間について原則となる基準が定められています。

※こちらの表は横スクロールで閲覧ができます。

管理項目 原則となる基準
1年の拘束時間 3,300時間以内
1か月の拘束時間 284時間以内
1日の拘束時間 13時間を超えないものとし、最大15時間

日々の勤務を見る際は、1日の拘束時間だけでなく、月間・年間の累計も確認する必要があります。

月284時間だけでなく年間の累計も確認する

ある月の拘束時間が284時間以内だったとしても、それだけで年間を通じて問題がないとは判断できません。

繁忙期が続いた場合などは年間の拘束時間が増える可能性があります。

月単位の集計とあわせて、年間3,300時間へどの程度近づいているかも把握しましょう。

例外を通常運用の前提にしない

改善基準告示には、労使協定を締結した場合など、一定の条件を満たした場合に認められる例外があります。

ただし、例外となる上限値を最初から通常の勤務計画として使うのではなく、原則となる基準をもとに運行計画を立てることが重要です。

トラックドライバーの休息期間はどう管理する?

休息期間とは、勤務終了から次の勤務開始までの、使用者の拘束を受けない時間です。

現在の改善基準告示では、勤務終了後に継続11時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らないよう定められています。

翌日の始業時刻だけでは判断しない

たとえば、翌日の始業予定が午前6時であれば、「6時から勤務できるか」だけではなく、前日の勤務が何時に終わったのかを確認します。

前日の終業時刻から翌日の始業時刻までを確認し、必要な休息期間を確保できているか判断しましょう。

「昨日何時に終わったか」を確認する

配車を決める際は、当日の予定だけではなく、前日の勤務終了時刻まで見ることが大切です。

特に早朝出発や深夜までの運行が続く場合は、次の勤務まで十分な休息が取れているか注意しましょう。

PICK UP
休憩時間と休息期間は別物

「休憩時間」と「休息期間」は似た言葉ですが、意味は異なります。

休憩時間は、勤務途中に労働から離れる時間です。一方、休息期間は、一日の勤務が終了してから次の勤務が始まるまでの時間を指します。

勤務中に長い休憩を取ったからといって、その分だけ勤務終了後の休息期間を短くできるとは限りません。

それぞれを分けて管理しましょう。

運転時間・連続運転時間も労務管理で確認しよう

トラックドライバーの勤務では、始業から終業までの時間だけでなく、実際に車両を運転している時間も管理する必要があります。

改善基準告示では、運転時間について、2日を平均して1日9時間以内、2週間を平均して1週間44時間以内という基準があります。

連続運転時間は原則4時間以内

連続して運転できる時間についても、原則4時間以内という基準があります。

長距離運行では、目的地までの所要時間だけでなく、どこで運転を中断するのかまで考えて運行計画を立てる必要があります。

「勤務時間」と「運転時間」を分ける

勤務中には、運転以外にも点呼、荷待ち、積込み、荷卸しなどさまざまな時間があります。

そのため、拘束時間と実際の運転時間を同じ数字として管理しないことが大切です。

時間外労働の年間960時間も確認する

2024年4月からは、自動車運転業務にも時間外労働の上限規制が適用されています。

特別条項付き36協定により原則の限度時間を超えて時間外労働を行う場合でも、自動車運転業務の時間外労働は年960時間が上限です。

ただし、年間960時間だけを確認すればよいわけではありません。

時間外労働に加えて、拘束時間、休息期間、運転時間など、改善基準告示による基準も確認する必要があります。

関連記事:
2024年問題後の運送業で運行管理者が担う役割とは?労働時間・拘束時間管理を解説

運送業の労務管理を行う7STEP


運送業の労務管理は、勤務後に時間を集計するだけではありません。

記録した情報をもとに、基準を超える前に運行を調整することが重要です。

STEP1|始業・終業時刻を正確に記録する

まず、毎日の始業時刻と終業時刻を把握します。

実際の勤務状況と記録に差が出ないよう、客観的に確認できる方法を整えましょう。

STEP2|拘束時間を確認する

始業から終業までの時間を確認し、1日の拘束時間を把握します。

さらに月・年単位でも累計します。

STEP3|休息期間を確認する

前日の終業時刻と次の始業時刻を確認し、必要な休息期間が確保できているか確認します。

翌日の配車を決める前に見ることが重要です。

STEP4|運転時間・連続運転時間を確認する

運行記録やデジタコなどを利用し、実際の運転時間を把握します。

長距離運行では、連続運転時間にも注意しましょう。

STEP5|月間・年間の累計を見る

その日の勤務だけに問題がなくても、月・年で見ると基準へ近づいている場合があります。

途中経過を定期的に確認します。

STEP6|超過しそうな場合は配車を調整する

基準超過が近いドライバーがいれば、その後の配車や勤務予定を見直します。

労務管理は「超過を発見すること」ではなく、「超過する前に調整すること」が重要です。

STEP7|記録を残して定期的に見直す

どの担当者でも勤務状況を把握できるよう、管理方法を統一します。

特定の担当者だけしか確認方法を知らない状態を避けましょう。

運送業の労務管理で使いたい管理表

ドライバーの勤務状況を整理する際は、次のような項目を管理しておくと確認しやすくなります。

※こちらの表は横スクロールで閲覧ができます。

管理項目 確認内容
始業・終業 毎日の勤務開始・終了時刻
拘束時間 日・月・年の累計
休息期間 前勤務終了から次勤務開始まで
運転時間 日・週単位の運転時間
時間外労働 月・年の累計
休日 取得状況
荷待ち時間 長時間化している運行の把握

一つの表だけですべてを管理する必要はありません。

勤怠システム、デジタコ、点呼記録、運行記録など、それぞれの情報を照らし合わせて確認できる仕組みを作りましょう。

PICK UP
月末になってから確認するのでは遅い

労務管理で避けたいのが、月末になって初めて拘束時間や時間外労働を集計する方法です。

月末に「基準へ近づいている」とわかっても、それまでに行った運行を変更することはできません。

週単位や月の途中でも累計を確認し、必要に応じて今後の配車を調整しましょう。

「管理する」とは、数字を記録するだけではなく、その結果を次の運行へ反映することです。

運送業の労務管理で起こりやすい5つのミス

労務管理のルールを理解していても、実際の運用方法に問題があると適切に管理できない場合があります。

1|残業時間だけを確認する

時間外労働だけを管理していると、拘束時間や休息期間の状況を見落とす可能性があります。

複数の基準をあわせて確認しましょう。

2|ドライバー本人の申告だけに頼る

本人の申告は重要ですが、会社側も勤怠記録や運行記録などを使って勤務実態を確認する必要があります。

3|荷待ち時間を把握していない

荷待ちや荷役の時間が長いと、運転時間がそれほど長くなくても拘束時間が増える場合があります。

どの運行で待ち時間が発生しているか把握しましょう。

4|例外を通常の運行計画に使う

改善基準告示の例外を毎日のように利用することを前提とした運行計画は避けましょう。

まずは原則の範囲内で勤務できる体制を考えることが大切です。

5|管理方法が担当者に属人化している

「この担当者しか計算方法がわからない」という状態では、休職や異動によって管理が滞る可能性があります。

確認方法や使用するデータを社内で共有しましょう。

荷待ち・荷役時間も労務管理で把握しよう


トラックドライバーの拘束時間が長くなる原因は、運転時間だけではありません。

配送先での荷待ちや荷役が長時間化している場合、ドライバー本人が運転方法を工夫しても拘束時間を十分に短縮できないことがあります。

荷待ちが長い運行を特定する

まず、どの配送先や時間帯で待ち時間が発生しているのか把握します。

複数回の運行記録を見ることで、恒常的に時間がかかっている場所を見つけやすくなります。

営業・配車担当とも情報を共有する

運行管理者だけでは改善できない場合は、営業担当者や配車担当者とも情報を共有しましょう。

必要に応じて荷主や配送先と相談し、運行条件の見直しにつなげることも重要です。

運行管理者と労務担当者の役割を分けすぎない


運行管理者は日々の点呼や運行状況、配車などを把握し、労務担当者は勤怠や時間外労働などを管理します。

それぞれ役割は異なりますが、情報を完全に分けてしまうと、「数字はわかっているが、なぜ勤務時間が長くなったのかわからない」という状態になることがあります。

定期的に情報を共有する

たとえば、労務担当者が時間外労働の増えているドライバーを確認し、運行管理者がその原因となった運行を確認する方法があります。

週次・月次など定期的に情報を共有し、勤怠と実際の運行を一緒に確認しましょう。

関連記事:
2024年問題後の運送業で運行管理者が担う役割とは?労働時間・拘束時間管理を解説

運送業の労務管理を改善する5つのポイント

労務管理を改善するためには、単に管理表を作るだけではなく、日々の運行へ反映できる仕組みにすることが大切です。

1|基準を一覧化する

拘束時間、休息期間、運転時間など、確認すべき基準を社内で一覧化します。

担当者ごとに異なる基準で判断しないようにしましょう。

2|勤務実績を早めに確認する

月末だけではなく、月の途中や週単位でも勤務状況を確認します。

基準へ近づいているドライバーを早めに把握することが重要です。

3|配車計画へ反映する

集計した数字を保存するだけでは管理とはいえません。

勤務時間が増えているドライバーがいれば、今後の配車を調整します。

4|長時間化している原因を分析する

拘束時間が長い場合は、「本人の働き方」に原因を求めるだけではなく、荷待ち、運行距離、人員不足、配車方法などを確認します。

原因によって対策は異なります。

5|管理できる人材を育てる

労務管理や安全管理について理解する社員を複数育成することも重要です。

特定の担当者へ負担を集中させず、継続して管理できる体制を整えましょう。

PICK UP
労務管理は「数字を減らすこと」だけが目的ではない

労務管理というと、「残業時間や拘束時間を減らすこと」が目的だと考えられがちです。

しかし、数字だけを減らそうとして業務量や配車方法を変えなければ、現場へ無理が集中したり、記録と実態に差が生じたりする可能性があります。

重要なのは、法令や基準を守りながら、安全に働ける運行体制を作ることです。

数字を確認したうえで、なぜ長時間化しているのかまで考えましょう。

人手不足も長時間労働の原因になっていないか確認しよう

一人ひとりの勤務方法だけを見直しても、人員そのものが不足していれば長時間労働を改善しにくい場合があります。

ドライバーが不足していれば一人あたりの運行回数が増え、運行管理者が不足していれば点呼や配車、勤務管理などの業務が一部の担当者へ集中します。

労務管理上の数字だけを修正するのではなく、人員配置、採用、資格者育成、配車方法なども含めて会社全体で見直しましょう。

関連記事:
運行管理者が足りないときはどうする?不足時の対応と社内育成のポイント

運送業の労務管理を学ぶなら運行管理者資格も一つの選択肢

運行管理者試験では、貨物自動車運送事業法だけでなく、道路交通法、労働基準法、運行管理の実務に関する知識なども出題されます。

そのため、運行管理者資格の学習は、ドライバーの安全や勤務を管理するために必要な基礎知識を体系的に学ぶ機会にもなります。

ただし、資格を取得すれば労務管理のすべてを行えるようになるわけではありません。

試験で学んだ知識に加えて、自社の勤務制度や運行実態について継続して学ぶことが大切です。

運行管理者候補の学習にはパシストの動画講座も活用できる

運送業の労務管理を支える人材を育成するうえで、運行管理者資格の取得を社内教育へ取り入れる方法もあります。

パシストでは、運行管理者試験対策を1本約20分前後のオンライン動画で学習できます。スマートフォンからも視聴できるため、通常業務を続けながら資格取得を目指す方にも取り入れやすい学習方法です。

社内で運行管理者候補を育成したい会社や、運行・労務管理に必要な知識を学びながら資格取得を目指したい方はご活用ください。


運行管理者試験対策オンライン講座「パシスト」を詳しく見る

運送業の労務管理は「記録・確認・改善」を繰り返そう

運送業の労務管理では、始業・終業を記録するだけでなく、拘束時間、休息期間、運転時間、時間外労働などを継続的に確認する必要があります。

「勤務を記録する→基準と照らし合わせる→月・年の累計を確認する→超過する前に配車を調整する→長時間化している原因を改善する」という流れを作りましょう。

労務管理を単なる勤怠集計で終わらせず、ドライバーが安全に働き続けられる運行体制を整えるための管理業務として取り組むことが重要です。